「ソウル宣言の会」6年間の活動を踏まえたあらたな出発
「社会的連帯経済を推進する会」発足集会報告
日時:2019年10月14日(月)13時30分~16時30分 (13時開場)
場所:明治大学駿河台キャンパス・研究棟4階第一会議室
主催:「社会的連帯経済を推進する会」設立準備会
協賛:ソウル宣言の会
10月14日(月)明治大学駿河台キャンパスで「社会的連帯経済を推進する会」の発足集会を50名ほどの参加でおこなった。
司会からの開催宣言の後、「社会的連帯経済を推進する会」設立準備会を代表して若森発起人から、「社会的連帯経済を推進する会」発足の経緯を報告された。それは「ソウル宣言の会」6年間の活動成果を踏まえ、更に「社会的連帯経済」への理解と広がりの追求を、よりわかりやすく発信していくことを目的として、名称に社会的連帯経済を使用した新しい団体を立ち上げ、取り組む事とした、との趣旨説明を行った(当会のホームページに掲載している「社会的連帯経済を推進する会にご参加ください」、をご参照下さい)。同時に現時点での呼びかけ人が配布された。そして今後広げていくことが報告された。
1.第一部、基調講演として、明治大学商学部教授 栁澤敏勝氏から「SDGsと社会的連帯経済の役割―21世紀は市民の連帯―」と題した講演が行われた
SDGsとは何か? そのでてきた背景から始まり、そのゴールまで語られた。それは2015年9月の国連総会決議「私たちは世界を変える:持続可能な開発のための2030アジェンダ」が背景としてあり、その最大目標が貧困の撲滅であり、「だれ一人取り残さない」と明言したことにあった。
その担い手として、民間セクターの役割を重視し、特に協同組合あるいは市民組織・慈善組織を名指した。この指摘は、一連の国連決定に深く関与してきた国連社会的連帯経済タスクフォース(TFSSE)の存在が大きい。このタスクフォースは、21世紀初頭、地球上での金融危機や気候変動、貧困、不平等の拡大が続いていることから、従来の成長開発戦略を根本から疑問視し「これまで通りの普通のビジネス」でこれらの危機に対応できず、社会的連帯経済が8領域(①人間らしい労働、②環境、③地域開発、④都市と人間生活、⑤女性 ⑥食糧安全保障、⑦健康、⑧金融)で、改善・改革への力となると注目し、以前からその担い手として、協同組合や、RIPESSなどの国際NGOの草の根運動の理念や実績を高く評価してきたことによる。
しかし日本政府の理解は相変わらず、新自由主義経済による経済成長至上主義であり、真逆の政策ともいえる立場である。イタリアやフランスなど世界では、社会的連帯経済に関わる法律が順次制定されており、日本との状況との違いも語られた。世界の流れを後押ししているのは、ILOやユネスコ等をはじめとした国連の諸機関であり、加えてGSEF(グローバル社会的連帯経済フォーラム)が取り組んでいる、①社会的連帯経済の実践例での国際交流、②協同組合や草の根運動の公的セクターとの連携・パートナーシップの形成にも、注目していくべきであると締めくくった。
2.第二部 各地の活動の報告
第1報告 白井 和宏氏(一般社団法人 市民セクター政策機構):「山形県『庄内FEC自給ネットワーク』のいまとこれから」
①庄内FEC自給ネットワークの特徴 ―― より実践的なアプローチ、そしてSDGsにかけている点!を克服する問題意識。
・内橋克人氏「食糧(F)とエネルギー(E)、そしてケアー(C)をできるだけ地域内で自給することが、コミュニティの生存条件を強くし、雇用を生みだし、地域が自給することにつながる」
・都市(消費者)と地方(生産者)との連携
・循環型経済を創る
②生活クラブ生協と1970年から続いている産直活動(提携)の実践で培った信頼関係が、今回の計画の土台になっている:2016年度山形県酒田市との連携(業務委託)開始
・新たな取組のために、2017年度から地域がとのような状況か調査開始
・上記を受けて:庄内FEC+W自給ネットワーク構想。以下の実践に結びつく
*生産者による生協の設立
*(E)庄内・遊佐町太陽光発電所
*(F・W)食品関連事業と雇用の創出
*(C)「参加する暮らしに集う町酒田」-新しいコミュニティの拠点の建設―酒田市基本計画
第2報告 木村 庸子氏(社会福祉法人 生活クラブ風の村):「千葉市『つながる経済』の取り組み」
①生活クラブ千葉の多様な地域活動の成果が、今回の社会的連帯経済の拡大をめざそう「千葉市『つながる経済』」の開催につながった。論議の末、より身近に感じるよう『つながる経済』に。
[開催呼びかけ文]
・冷戦が終わり、資本主義が世界を席巻するようになって30年近く経過した。
・世界的に格差がひろがり、貧困層の増大、それが排他的民族主義の拡大をするようにもなっている。今、世界は、あらたな価値観の模索が始まっている。
・日本の現状も同じような傾向に加えて、少子・高齢化が進みより危機を孕んでいる。現在の社会、経済システムでは解決出来ないことが山積みしている。
・お金が万能の社会から、「人を大切にする、人のための経済、社会」への転換が不可欠。
・この転換、解決には、多くの人の参加が不可欠。
*「つながる経済(社会的連帯経済)」を非営利団体のみならず、営利企業も含めて「営利を目的とせず、人と人、人と自然を大切にする事業活動」と位置付け、活動範囲を広げ多くの参加をはかる。
②呼びかけ趣旨に沿い、従来の垣根を越え、世話人メンバーは各界から多数の団体、個人が参加
③「つながるフォーラムちば」には、多様な参加者160名が参加、鼎談は、熊谷千葉市長、広浜中小企業家同友会全国協議会会長、池田生活クラブ風の村理事長で行う。
・池田理事長から「つながる経済」とは何かを提起。それぞれ立場から「つながる経済」への考え方や、実践取り組みの紹介があった。
・地域貢献に対する税制改革、「SDGs」取り組み施策などが話された。
・その後、参加団体の取り組みのリレートーク
④会場アンケートでは、このようなネットワークへ期待感が寄せられる。
⑤世話人を中心に、ネットワークの充実に継続的な取り組みを確認。
第3報告 森 良氏(NPO法人 エコ・コミュニケーション・センタ-:ECOM):SDGsのまちづくり」<二つの素朴な疑問>
①なぜ足許の資源を使わない?②いいことやっているのになぜバラバラ?
*人びとをつないで → 地域資源をしごとにする → 人びとをつなぐ
②SDGsは免罪符? そうではなくて <問題解決/地域再生の指針/方法として活用>
<SDGsの特徴>
①根本療法
・「国連2030アジェンダ われわれの世界を変革する」
・「だれ一人取り残さない」
②バックキャスティング
・「将来の姿」を想定しそこから「今やるべきこと」を導き出す
③つながり、かかわり
・統合的に、総合的に
・パートナーシップとネットワーキングで
④事例研究と報告
・江戸、東京都近郊の広域循環――小さなアンテナショップネットワークによる広域循環の再構築
→(例)山梨・三多摩エリアの達成目標・手段≪ミレットロードプロジェクト≫すみつづけられるまちづくり
*F=食のサイクル、E=脱石油、ゴミ0、皆農のライフスタイル、C=住民主導による地域包括ケア
*W=多様な働き方・住まい方
・2030年における下川町の有りたい姿(下川版SDGs)の構想をまとめる
・日野市での取り組み開始(SDGs未来都市に選定)、板橋区の事例(学びあい・参加・ボトムアップのローカル(L) SDGs)。多様なプロジェクトの形成による活動の重層化へ。
⑤FECの協同事業化 ―― 継続のためにもプロジェクトの事業化が必要性であり、その追求
・活動の持続・発展を保証する
・地域資源を仕事にする地域に雇用を
・公共のしごとは、質の高い働きを適正な価格・待遇で
⑥地域から国際化――(1)フェアートレードタウンへ(2)労働力ではなく人間としての労働環境
3.まとめと閉会挨拶
栁澤教授からはSDGsが国連から出された背景を説明頂いた。日本では国連と言えばついつい、安全保障理事会の、大きな政治面や経済面ばかりに眼にがいってしまうが、世界の社会情況を把握し、改革へのアプローチが、国の機関からの代表ばかりではなく、世界の多くのNGOや草の根運動を担っている人びと交えて、国連の政策が創られていることに注目し、理解していくことが大切だと感じた。白井さんからは生協の産直事業の蓄積から、地域再生へのアプローチが実践として語られた。また、木村さんは既成の組織枠にとらわれずに多く人びと、団体が参加を可能とする環境、条件を創り、議論を重ねて今の閉塞状況を突破する方策が語られた。森さんからは、各地でSDGsをベースにしたFEC+W(仕事・雇用)の取り組みが始まっていることが報告された。どれにも共通するのがこれらの取り組みを推進するのは「社会的連帯経済」であり、ちばフォーラムの呼び方では「つながる経済」となる。現在は、資本主義の行き詰まりまでもが指摘される中、今、世界的に注目されている「社会的連帯経済」の日本での理解と広がりへの取り組みが大切だと、みなさんと共に確認出来たのではないかと思う。
今日発足した「社会的連帯経済を推進する会」は、その一翼を担っていきたいと考えている。なお「ソウル宣言の会」は、「社会的連帯経済を推進する会」に合流することを確認し、その準備を進めています。
なお、「GSEF2020メキシコシティ大会」は、10月21日(水)~23日(金)の予定で開催されます。この参加準備にも取り組んでいきますので、みなさまのご協力と注目をお願い致します。
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