​セミナー開催にあたって

◆社会的弱者を襲ったコロナ禍ー日本における社会的連帯経済の弱さとその原因◆

 コロナ危機は、医療・社会保障費の削減、労働法制の規制緩和を進めてきた新自由主義の問題点、貧富格差の拡大と社会的弱者への差別、を世界中に露呈させました。
 多くの国々で医療崩壊を引き起こし、日本では「自粛と補償はセット」を拒否する政府によって多くの人々が経済的困窮に陥っています。とりわけ危機的状況にあるのが低賃金で不安定な雇用条件で働いていた女性、若者、高齢者、外国人労働者、障害者、などの社会的弱者やマイノリティです。
 困窮にあえぐ人々に対して市民による支援活動が各地で始まっていますが、今こそ日本において「社会的連帯経済」を強化・拡大すべき時だと考えます。しかしそもそも他の「先進国」と比べても、これほど格差・貧困が深刻化している日本でなぜ「社会的連帯経済」についての理解と実践がなかなか進まないのでしょうか。
 たとえば、子どもの貧困率は13.9%(7人に1人)、ひとり親の困率は50%を超えています。国内総生産(GDP)に占める初等教育から高等教育の公的支出の割合は、OECD35ヶ国中最下位の2.9%でしかありません。近年、子ども食堂が全国で展開されるようになったとはいえ、「子どもの貧困の原因は親の貧困問題である」という認識は広がっていません。
 多くの自治体は、生活保護受給者を増やさないため、できる限り申請を拒否する、あるいは窓口にさえ近づけさせない取り組みを行っています。こうした行政の対応を支えているのが、社会に浸透した「自己責任論」に由来する「生活保護バッシング」の空気だといえます。
ある調査によると「コロナに感染するのは自己責任だと思う」と答えた人の割合は、米国1.0%、英国1.5%に対して日本は11.5%にも上りました。もともと同調圧力の根強い日本社会ですが、1990年代以降の新自由主義によって「自己責任論」がすっかり根付いてしまった感があります。
 こうした偏った自助を強調する新自由主義「自己責任論」の対極にあるのが、自主的・民主的な経済活動を通じて相互扶助・共助・互恵の社会をめざす社会的連帯経済の運動です。

◆社会的連帯経済を強化・発展させるために◆

 今回の連続ウェブセミナーでは上記の視点に基づき、現場での支援活動を行っている方々を迎えて、「社会的連帯経済」を強化するための方策を考えます。
 すなわち、①ポストコロナの時代において、社会的連帯経済を強化・発展させるために、私たちは、地方自治体や、協同組合や労働組合等の中間組織と協力しながら何をすべきなのか、それを考える基礎として、 ②コロナ下において経済的弱者やマイノリティに何が起きているのか、を考えたいと思います。 したがって今回の連続ウェブセミナーは、社会的連帯経済を大局から論じるものと、具体的取り組みの報告とを組み合わせたシリーズです。  「他国の人々がコロナに感染しないよう互いに協力することこそパンデミックを克服する唯一の道であり、利他主義こそ最善の合理的利己主義に他ならない」と主張するフランスの思想家ジャック・アタリの言葉は私たちを勇気づけてくれます。しかし、格差と断絶が広がるこの世界が、コロナ禍を機に理想的な社会へと流れを変えるとは思えません。
 その上、日本に住む私たちにはコロナ禍に加えて、「少子超高齢化による人口減少」や「首都直下型地震」が待ち構えています。さらには、格差の拡大や社会的弱者の増大に手を打とうとしない政府や地方自治体も大きな壁です。社会的連帯経済の広がりが、少数の命を救う救命ボートの役割にとどまらず、タイタニック号の沈没を阻止する「持続可能な地域分散型社会モデル」の構想提案と実践に発展させるため、ぜひ「連続ウェブセミナー」と「社会的連帯経済を推進する会」にご参加下さい。

​2020年8月 社会的連帯経済を推進する会事務局

 

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