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GSEF2020に向けた学習会のご報告 ーいまメキシコ政治経済研究はなにを明らかにすべきか?ー


12月5日(木)明治大学にてGSEF2020メキシコシティ大会に向けた学習会を開催し、30名近くの参加がありました。この学習会は、9月18日、地域通貨の国際大会に参加するためメキシコより来日していたクラウディア氏を囲む学習会に続く2回目の会になります。


今後もGSEF2020に向けてメキシコやその社会的連帯経済の取り組みを学ぶ学習会を定期的に開催していく予定です。皆様のご参加お待ちしております。


報告

陰影に富む国:いまメキシコ政治経済研究は何を明らかにすべきなのか?

講演者:所 康弘(明治大学商学部 専任准教授)


お話の内容は、メキシコの概要について、アメリカとの関係、NAFTA、移民の問題、時間があればメキシコの現政権AMLOということで進められた。

○メキシコの基本情報

○米墨関係史

○NAFTAの下でのメキシコ 

○移民の構造的要因

補論. メキシコAMLO政権と階級闘争


1. はじめに ~メキシコの基本情報~

連帯経済については、アルバート.O.ハーシュマンの「連帯経済の可能性―ラテンアメリカにおける草の根の経験 (サピエンティア)」という本があります。

スペイン語の国を人口の多い順からいうと、1位がメキシコ、2位がアメリカ、3位がコロンビア、スペインはその下ぐらいになる。ラテンと言ってもメキシコは、他の国々とはかなり違った国であるようです。

メキシコでは食文化に注目してもらいたい。世界文化遺産に登録されている。古代からとうもろこし、唐辛子、アボカド、カカオなどの原産地。テキーラは現地では飲むコーヒーと言われている。80ペソ程度。(1ペソ=6円ぐらいとみてよい)

メキシコでは、文盲の人が多いこともあって壁画運動が行われてきた。壁画でメキシコの歴史を教える運動があった。世界で最大の壁画が中央図書館(フアンオゴルマンの壁画)。4面にわたっている。宇宙観、宗教観、歴史が描かれている。力強いシュケーロスの壁画もある。

2. アメリカとの関係

「哀れなるかなメキシコ、天国からかくも遠く、米国にかくも近し」ポルフィリオ・ディアス(1830年~1915年)元大統領の言葉とされる

上記の言葉が、メキシコの今に至るまでの歴史を象徴すると言っても良いかもしれない。メキシコの領土の半分をアメリカに取られてしまった。その後、そこに行こうとした人たちは、移民ということになって、大変な抑圧を受けている。米墨戦争は、埋蔵されている石油を狙って仕掛けられた戦争であるとも言われる。


1. メキシコの独立(1810~1821年)と米国の西漸

2. テキサスへの米国人の入植

3. テキサス独立戦争(1836年、一方的に宣言)、共和国誕生

4. 米国によるテキサス併合(1845年)と米墨開戦(1846年)

5. メキシコ敗戦と領土喪失


米国とメキシコの安全保障の取り組み

2001年9.11テロ事件

2005年「北米の安全と繁栄のためのパートナーシップ (SPP:Security and Prosperity Partnership of North America)」安全保障のためのアジェンダであり、経済面のNFTAと両輪をなすもの。当初は対テロ戦争が主要な目標だったが、次第に①麻薬密輸②組織犯罪対策③不法移民対策のための国境警備強化へ拡大適用

2008年「メリダ・イニシアティブ(プラン・メキシコ)」

米国議会が25億ドルの予算を計上:メキシコ警察・軍の麻薬取締りのための関連設備購入費(特殊航空機の納入等)やパイロットや技術者の訓練費として

2011年「メリダを越えて(Beyond Mérida)」 策定

貧困対策も組み込む。新たな両国安全保障協力(①犯罪組織の解体、②法の支配の制度化など)

従来の内容(装備の充実・提供)を引き継ぎつつ、麻薬対策アプローチを拡大する内容


麻薬関係

コロンビア発メキシコ経由米国行

コロンビアの農民が1ヘクタールの畑のコカの葉を約80ドルで売る。

アメリカ国境を越えた時点で3万4700ドルにまでになり、ニューヨークの街頭では12万ドルにまで上昇する。カルテル テリトリー(支配領域)とドラッグルート(2012年)

(出所)GEO-Mexico, The Geography and dynamics of modern Mexico. http://geo-mexico.com/?p=10906)

①Los Zetas:メキシコ32の州の半分以上、おもに東部を支配、極端な暴力性

②シナロア・カルテル:西部の大部分を統治、メタンフェタミン製造を専門とする企業が増加

③ガルフ・カルテル:ベラクルス(メキシコ湾岸)周辺を支配

④テンプル騎士団(La Familia Michoacana):2010年勃興の新興カルテル、南西部のMichoacánおよびGuerrero州のDrug関連活動を管理・支配

国連『グローバル・ドラッグ・レポート』(2013年)より


DRUG問題の背景にある国際関係

アメリカは麻薬撲滅をメキシコに押し付ける一方、年間トン単位で麻薬を「輸入」

『[アメリカ人が]麻薬を吸いたいと言うなら吸いたいだけ吸えばいい。容認するわけではないが、それはアメリカの消費者、アメリカ社会が決めることだ。だが、彼らが[大量の麻薬を購入することで]殺人者であるメキシコの麻薬組織の手に多額の資金を垂れ流しつづけるのは、とうてい我慢ならない』(Felipe Cardelon元大統領)

Tom Wainwright,“Narconomics: How to run a Drug Cartel”, 2016.

米国の金銭的支援 メキシコ軍・警察 に現地マフィアと争わせる

アメリカは最終消費地としてマフィアにドラッグ供給をさせている

カルテル間抗争に使用される小火器は米国武器業者から流出

メキシコでは麻薬を運ぶだけでなく、国内で生産するようになり、貧農たちが「参入」

NAFTAで、安価な米国産穀物が大量流入し価格下落し、離農・廃業に追い込まれ、生計のために麻薬栽培に手を染めるという背景


麻薬対策の基本的な誤り

供給面抑制へ取り組んでいるが、需要面(消費者側)は温存する形となっている

麻薬需要の弾力性は低い」(ex. マリファナ価格が10%上昇しても需要は3.3%しか減少しない)


3. NAFTAの下でのメキシコ

トランプはNAFTAでアメリカの雇用が失われたと言っているが…

NAFTAの下での労働

・メキシコの実質賃金:NAFTA以降、一貫して減少 ヒスパニック系の雇用がまず失われた。

・一人当たりのメキシコの国内総生産:ほとんど上昇せず

・メキシコの製造業賃金:中国より40%程度低い水準

・米国賃金と国内メキシコ人の自動車産業労働者の賃金比率 9:1(NAFTA以前は5:

1)

・数百万人の農業、中小企業の失業者:アウトソーシング新規製造業雇用(数10万人)

・実質ベースのメキシコ年間平均賃金:NAFTA以前の水準から2パーセント、最低賃金は14パーセント減少


メキシコ農村社会・農民の衰退

・「NAFTAは同国農業と農村に深刻な影響を及ぼしてきた」(ロペス・オブラドール新大統領・2018年12月就任)

・2004年に農業生産量の90%を占めた主要農産物52品目の全生産量は、2017年には1億6,200万トン減少、1億3,370万トンに→現状のままでは2030年に国内食料消費の80%を輸入に依存

・農産物価格(国内市場向け)の低下傾向

基礎穀物生産にかかわる小規模農家の廃業(1991年~2007年で490万)・離農


4. 移民問題の構造的要因 アメリカ大農場を支える労働力

2017年までの10年間で、出生国(メキシコ)以外で暮らすメキシコ人の数は横ばい。その結果、ラテンアメリカとカリブ海からのすべての移民に対するメキシコのシェアは2010年の36%から2017年には33%へ減少。かつての移民送出国が移民通過地、移民受入地となった。

米は、移民労働者の安定的確保をしつつ、移民排斥のイデオロギー(排外主義的ナショナリズム、移民への攻撃、国境の壁づくりと言ったレイシズム的イデオロギー)を強力に進めている。これが資本にとっては重要。相反するものを同時に追求していくことがなされている。このことによって、一般市民と移民を分断化し、正規労働者を特権階級化していくという形でどんどん分断化していっている。移民の取り締まりと軍事技術がセットで進められている。

今はまだメキシコに外注しているけれど、AI化が進むと国内生産回帰ということも起きると考えられる。


5. まとめにかえて メキシコ人とは?

オクタビオ・パス(ノーベル文学賞受賞、詩人)の孤独の迷宮

「老人や子供、クリオーリョやメスティソ、将軍、労働者や学士、つまりメキシコ人というものは、己れのなかに閉じこもり、身を守る存在のように思われる。」「その顔が仮面であり、微笑が仮面である。」「その気難しい孤独の中に追いやられ、とげとげしくも丁重な彼にとって、沈黙や言葉、礼儀や軽蔑、皮肉や忍従、すべてが防御のために役立っている。」その屈折に思い当たる節がある。

孤独の迷宮 第3章「死者の日」

「怖いものを眺めること、さらにそれと交わることで生ずる親近感と喜びが、メキシコ人の性格の最も顕著な特色の一つとなっている。村の教会の血だらけのキリスト像、‥11月2日に骨や頭蓋骨を形どったパンや菓子を食べるといった風習‥。」「我々の死に対する信仰は、生への飢えである。愛が死へのあこがれであるのと同様、生に対する信仰でもある。この自己破滅への好みは…一定の宗教性に由来する」


「孤独なメキシコ人は祭りや公共の集まりが大好きである。」鐘と一緒で軽く叩くと軽い音が、ドント叩くとドンと響いてくる。そうした意味で奥の深さを感じる。そういう文化に接していただければと思う。


人類学者オスカー・ルイス「貧困の文化」

「貧困の文化―メキシコの“五つの家族”」(1959年)の中で用いた表現 1960年代以降のアメリカで提示され、貧困者が貧困生活を次の世代に受け継ぐような生活習慣や世界観を伝承している、という考え。スラム居住者の生活を生き生きと描いた報告や、何世代にもわたる貧困の文化が国境を越えて行くとした主張によって広く知られている。


補論 AMLO新政権は左派か?(画像パワーポイント参照)


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